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  • Writer's pictureChet Chetwynd

東京オリンピックは日本のグローバルビジネスにどのような影響を与えるか?

[Japanese Version, for English Version, click here]

2020年夏、日本政府とスポンサー企業が命運を掛け、夏季オリンピックが東京で再び開催されます。東京オリンピック開催は日本経済にどのようなインパクトを与えるのでしょうか?また、日本のスポンサー企業はこの機会をどう活用できるのでしょうか?

簡単な背景

東京都は、1964年夏に一度目のオリンピックを開催し、さらに二度目を開催することができた数少ない7都市の一つです。以下のように、1964年のオリンピックは日本にとって重要なものでした:

  • 第二次世界大戦後、日本は再びグローバルコミュニティに復帰することができた

  • 日本の近代化を推し進める主要プロジェクトの目玉となった

  • ビジネスとテクノロジーの新しいハブとして世界が日本に注目するようになった

その後、日本は2007年夏のオリンピック招致に向けて入札を行い、2016年夏のオリンピックはリオに与えられました。2020年の招致は、2011年に当時の石原慎太郎東京都知事が主導したもので、2020年夏のオリンピック開催権は、安倍晋三首相が就任してから1年も経たない2013年9月に東京に与えられました。試合まで1年を切った今、投資、準備、計画の大半はすでに完了しています。

オリンピックの開催:コストと利益

Going for Gold: The Economics of the Olympics(金メダルへ向かう:オリンピックの経済学、2016年)において、エコノミストのBaadeとMathesonはオリンピックを開催することのコストとメリットについて次のように結論付けています:

  • いずれの場合も、コストは過小評価されている(東京でのケースも同様)

  • 開催国は通常、お金を失い、納税者がその負担の大部分を担うこととなる

2020年東京オリンピックのコストは2013年当初、70億ドルでしたが、一部の見積ではその額は200億ドル以上になるとされており、これは2008年北京、2014年ソチに続く3番目に高額なオリンピックとなります。200憶ドル以上の経費が全てオリンピックに関わるものかという議論が続いていますが、これは建設や経済を活性化するプロジェクトはオリンピックの有無に関わらず行われたため、実際の費用にあいまいさが生じているからです。東京都は最近になって費用が135億円(125憶ドル)に上ると発表しました。分類方法に関係なく、インフラへの投資は2018年でピークに達し、スポーツ会場の建設は2019年7月時点で90%に達します。観光客の増加による長期的な見返りについては、1992年バルセロナと2002年ソルトレイクシティのたった2つだけが、五輪により観光業へ統計的に大きなプラスを示しましたが、周囲の有名な都市に隠れていた「隠れた観光資源(宝石)」による貢献であったことが理由とあげられています。東京は隠れているわけでもなく、知られていないわけでもないことから、このようなメリットを享受することはありません。従来より、日本政府は観光業を経済成長の柱として位置づけており、ビザの緩和から航空運賃の引き下げまで、東京オリンピックの露出を最大限に活用するための観光刺激策はは既に講じられてきました。安倍首相は観光業を日本のGDPを2030年までに600兆円に引き上げる柱と位置づけています。観光業は既に進んでおり、2020年に新しい目標として掲げられた年間4,000万人の訪日客は、2014年当時に設定した年間2,000万人の目標の二倍に上ります。


オリンピックがもたらすインフラや観光業への大きな経済効果はすでに過去のものかもしれません。


日本のオリンピックスポンサー

メリットを享受できる時期はオリンピックスポンサーによって違います。陽の光を浴びる大きな瞬間はまだまだ先であり、見返りは決まっていません。投資に対するリターンを得るための課題は、日本企業のスポンサーが国際オリンピック委員会(IOC)との過去最高のスポンサーシップ契約で同意できるかどうかです。企業オリンピックスポンサーは次の2つの種類に分類できます:

  1. 複数のオリンピックにまたがる複数年契約をしているワールドワイドオリンピックパートナー

  2. 東京2020のスポンサー(ほとんどが日本企業)

それぞれの種類毎に、合計31憶ドルに上るスポンサー料金から参加企業が何を得ようとしているのか考えてみましょう。

ワールドワイドオリンピックパートナー

ワールドワイドオリンピックパートナーはたった13社と少なく、そのうち日本企業は3社だけです。IOCとのスポンサー契約の詳細は下記をご覧ください。東京が2013年に開催権を獲得した後に行われた契約はこちらです:


これらの新しい契約は、過去の年間約25百万ドルという金額を遥かに超えるもものとなりました。しかし、ワールドワイドオリンピックパートナーになるためにIOCへ平均より高い金額を支払ったのは日本企業だけではありません。2018年、中国のアリババは、約8億ドル、12年間に渡って年あたり平均65百万ドル以上のワールドワイドスポンサー契約にサインしました。高額の契約にサインする動機は企業によって違います。パナソニックはオリンピックに向けてAV技術のソリューション販売に重点をおいていますが、トヨタとブリヂストンはグローバルマーケティングとブランディングに重点をおいています。オリンピック開催はビジネスにプラスの影響を与えるという過去の実績があり、トヨタとブリヂストンはそれに基づき投資しています。トヨタの「Start Your Impossible」キャンペーンは、全ての人が、世界中のあらゆる所で、「移動に自由を」持つべきであるというブランドメッセージを広げるために計画されています。これは、日本やトヨタが得意とするロボティクス分野を世界に紹介する上で良いメッセージングであり、上手いやり方です。。トヨタはまた、オリンピック村でアスリートやスタッフの移動に利用する小型レベル4自動運転車をデビューさせる予定です。トヨタの自動運転技術が、この分野におけるグローバルリーダーであるAlphabet、グーグル、ウェイモやテスラの取り組みとは違ことを期待させます。またプリウス販売が米国で遅れているため、トヨタは、商用EVラインのリフレッシュアピールもしています。日本政府も大々的に推進している日本独自のイノベーションに、水素燃料を動力とする車やバスがあります。日本は液化天然ガス(LNG)世界一の輸入国であり、石炭と石油においては輸入国のトップ4に入ることから、自給自足できる水素燃料社会となることを望んでいます。トヨタの水素自動車MIRAIの普及がすぐに進まなかった場合、少なくともパナソニックはテスラへの電池供給するに頼ることにでしょう。ただし、テスラとパナソニックの間には、ある程度の緊張関係があります。中国市場でのテスラ増加によって、非日本製バッテリーの搭載が新しく行われ、アジア近隣諸国での競争が激化していることがそれを示しています。

東京2020スポンサー

東京2020の企業スポンサーは、その契約金の高さ、ワールドワイドオリンピックスポンサーよりも低い独占権、スポンサー企業数が多い、という点で異例です。一部の経営幹部達は国家奉仕に追い込まれてしまったと感じています。

『言いにくことですが、現実的な言い方をすれば、我々は何も得ていません。』と、15社ある『ゴールド』スポンサー企業になるため約1憶ドルを支払ったある日本の大企業の役員は言います。 Financial Times, August 15, 2019

このような懸念に関わらず、世界水準よりメリットが少ない日本のスポンサーにとって、大きな機会と言えるのは、東京2020を日本の革命的な技術を紹介する場として使うことです。スポンサー企業リストで紹介されているテクノロジーを見ると次のようなものがあります:

  • JR東日本は日本の鉄道システムの効率性を示し、新しい静かな新幹線N700Sスプリームを披露し、2027年に開業予定のリニアモーターカーをデビューさせるかもしれない。

  • NECの公共安全グループは、アスリート、役員、スタッフの会場アクセスに顔認証技術に使用する先駆者となります。

オリンピックは世界的なイベントであるため、日本人以外の人々が納得する、より高い説得力が必要です。未来の技術をデビューさせることは良いことではありますが、グローバルで競争力のある製品提供がそのあとに続き、東京2020のマーケティング費用を正当化できる必要があります。日本の経済界や国内経済にとってのオリンピックの真の重要性は、東京2020オリンピックの直接的な経済利益(またはコスト)を大きく超えています。このイベントは日本と経済界にとって数億ドル規模のマーケティングイベントです。日本のオリンピックへの投資が、世界の舞台で日本企業に長期的な利益をもたらすことができるかどうかは、次の2つの重要な要素にかかっています:

  1. 世界が受け入れるキーとなるイノベーションが日本にあるか?(例えば、展示されているロボティクス技術は魅力的か?または逆に阻害となるか?)

  2. 多国に展開する日系企業は、世界が注目する機会を利用して、日本国外でより影響力のある革新的な企業になり、グローバル市場での堅実なビジネス遂行を通じて影響力を拡大できるか?

オリンピックの開催 - 世界を変える

今回の五輪は、私たちが見てきた中で間違いなく最も革新的であり、2022年冬季北京オリンピックのスポンサーに取って、高い水準を設定することになります。では、東京2020は日本のグローバルビジネスにおける地位を手助けするものになるでしょうか?オリンピックを開催するだけでは、答えはノーです。大会ビジョンの公式回答も何の手助けにもなりません。それでも、私は以下のメッセージを読んで温かい気持ちになりました:

『スポーツには世界と未来を変える力がある。1964年の東京大会は日本を大きく変えた。2020年の東京大会は、「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」、「一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」、「そして、未来につなげよう(未来への継承)」を3つの基本コンセプトとし、史上最もイノベーティブで、世界にポジティブな改革をもたらす大会となる。』

日本文化の宗教的基盤から、広く野心的なビジョンステートメントまで、ここで解き明かすべきことはたくさんありますが、それは別のブログでお話していきたいと思います。それまでは、世界に前向きな改革をもたらことに議論の余地はない東京2020に参加しましょう。、


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