• Chet Chetwynd

AI(人工知能)における日本の現状と課題

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日本経済の奇跡・高度経済成長

1980年、日本は経済規模世界1位となる軌道に乗っていました。そして今日、日本は経済規模世界3位となっています。2019年7月、日本経済研究センター(JCER)は、下記のように2060年までの長期経済予測を発表しました。


  • 日本のGDP規模は基本的に5兆ドル付近で横這いとなっている(2014年米ドル換算)

  • 2030年頃に中国が米国を超えて世界最大のGDP規模となるが、2060年頃には米国より下位に転落する

  • インドの経済は2030年までに日本を超え、日本をGDP規模4位に押し下げる


私はキャリアの大部分でハイテク部門に従事してきたため、急速に状況が変化するこの業界で、2~3年を超える予測というのは可能性のある一つのシナリオを表しているだけに過ぎないと理解しています。このため、ただ一つの40年先の予測の正確性に対する私の信頼度は、言ってみれば、0に近いです。もちろんJCERは数多くあるシナリオの中から一つを提示しただけに過ぎません。私は急速な成長に対応できる経営管理アプローチと相まったシナリオベースのプランニングに大きな信頼を置いています。しかしこれはまた別のお話です。今のところは、それでもJCERの超長期シナリオから取り入れるべきキーポイントがいくつかあります。


  • 日本の高齢化問題が将来的な成長に対し大きな妨げとなっている。

  • 中国にも高齢化問題がある - 大きな影響はまだ発生していない。

  • 無形資本(例:ソフトウェア、IP、ビジネスモデル)が人口減少 / 高齢化の中での成長の源である。

  • (社会での)共有デジタルデータが日本の効率性を高められる。

  • グローバリゼーションは国際分業のメリットをもたらし、競争や国境を越えた情報交換を通して生産性を向上させる。


この先のお話をする前に、何が成長を促進するか、また生産性の変化が国際経済シェアの変化にどのように影響を与えるかを振り返っていきましょう。また、どのように生産性の変化が地域の影響力や関係性を変えるかも考えましょう。

2000年間の経済規模の推移を示したこの驚くべきグラフでは、白い縦線の左側にある1800年間が、世界の大国のGDPシェアが人口の違いによってのみ左右されていることを示しています。アウトプットは、一人の人が手と簡単なツールでできることに対応した。白い縦線の右側には産業革命とそれ以降です。ここで、世界の人口と生産性の間に相違が生じ始め、最初の受益者は英国、後にドイツと米国となりました。アメリカはその成長に移民を加えました。日本は、製造業、供給業者、流通業者、銀行が系列と呼ばれる緊密なグループで協力したことが日本の経済成長の特徴でした。系列:強力な労働組合と春闘、政府官僚との良好な関係、大企業の終身雇用制度、高度に組織化された工場と労働者。

現在、中国は人工知能への注力を含めた中央政府の戦略と合わせた都市人口の増加期を通じて成長を続けています。


AIはただの流行語なのか、それとも次の生産性向上力の原動力なのか?

恐らく、両方でしょう。人工知能(AI)は近頃テクノロジー業界では大きなキーワードとなっています。IT企業の収支報告では、『人工知能』という単語が、2011年の『クラウド』を追い越し、2016年の『ビッグデータ』を超え、2017年の『マシンラーニング』の2倍以上も言及されました。過大な評価(マーケティングや財務報告では誇張されている可能性が高い)にも関わらず、人工知能は、ディープラーニングやニューラルネットワークなどの機械学習技術、マシンビジョンや自然言語処理などの応用、さらにはロボット、自律走行車、創薬などの分野を可能にし、加速させるなど、新たな革命を徐々に推し進めています。アメリカと中国の間で、AIと量子コンピューティングの優位性をめぐる競争が起きていることは間違いありません。。。アジアのパワーバランスや日本の戦略的状況については別の記事でお話します。


なぜAIが日本にとって重要なのか?

日本にとってAIが重要なのは、現在の資本と労働の能力を超えて資本と労働のハイブリッドを生み出すことができるため、GVA (GDPと同様である)の水準が高まり、1人当たりの生産性が向上することです。日本政府の観点からすると、これは重要な問題です。なぜなら、高齢化に伴う労働力や医療の課題に対処するためのタスクの自動化には十分な可能性があるからです。日本企業にとっては、完成品や部品の輸送、集積回路、機械など、日本の主要な輸出産業に関わるAI技術やプロセスのグローバル化に伴うビジネスチャンスがあります。また、競争力を維持できなければ、自動車などの業界で世界シェアを失うリスクもあります。


日本でAIを推進しているのは誰か?

AIのイノベーションの主な推進力は企業です。WIPO Technology Trends 2019:Artificial Intelligenceによれば、上位30の特許出願機関のうち、企業が26を占めているのに対し、大学や公的研究機関は4つしかありません。このような企業対大学の優位性のパターンは、ほとんどのAI技術、アプリケーション、分野に適用されており、大学が基礎を築くことはあっても、イノベーションの主要な推進力となっているのはその国の企業であることを示しています。モノのインターネット (Internet of Things:IoT) 、ビッグデータ、そして計算処理能力の向上により、AIアプリケーションは、1980年代の最後のAIの波が起きたときよりも、今の方が実現可能性が高いことを意味します。そのための準備として、日本は大学や専門学校から年間25万人のAI専門家を輩出することを目指しています。新しい機械学習やニューラルネットワークアルゴリズムの博士レベルのクリエーターについて話しているのではなく、センサー、データ、そして最新のAIメソッドを活用するAIアプリケーション開発者についての話です。このようなスキルを革新的な成果のために適用できるよう多くの学生たちに教えるには、ある程度の創造性が必要で、利用可能な教師も不足していることは確かです。近い将来、日本の大規模なグローバル企業が、基礎研究だけでなく、現実の問題を解決するための技術の応用と、それらの解決策を市場にもたらすために必要なアプローチに焦点を当てて、よりデジタルな未来に向けて従業員を準備するペースを上げることもまた、日本の大規模なグローバル企業にかかっています。これには、海外企業の買収もうまく組み合わせる必要があるかもしれません。


日本企業はAIにおけるリーダーなのか?

この答えは間違いなく難しいものです。下記の表を見るとAI関連の特許を持つトップ26社の中で日本は12社、米国が6社、ドイツが2社、中国が2社、韓国が2社、フィンランドが1社、1社がオランダという事がわかります。

AI関連のグローバルな収益がより適切な指標でしょうが、新しくできたばかりの流行にある分野での収益を測定するのは非常に難しいものです。では年次報告書やアナリストの見積もりを当てにすることはできるでしょうか? これには重要な注意事項があります。ハードウェアを含むレガシー製品は、市場が 「クラウド」 で沸いていたときに見たように、新しいトレンドの下で再分類されることがよくあります。IBMのようなグローバル企業は、謙虚な日本企業よりも積極的でしょう。成功の判断をさらに難しくする理由は、急激に伸びている言葉の定義が、Gartnerのハイプサイクルが混雑しすぎて読めなくなる『Peak of inflated expectations(インフレした期待の頂点)』周辺で安定するまで何度も変わることにもあります。NISTが2011年にクラウドの包括的な定義を発表した時もそうでしたが、私は同じような混乱をAIに見ています。Gartnerの2019年のAIハイプサイクルと、それが今日どのくらいの領域を包含しているかを見てください。IDCが定義した市場はソフトウェアをはるかに超えており、サーバ、ストレージ、AIに重点を置いたサービスなどが含まれています。


応用AIでリードする可能性が高いのはどの企業か?

米国では、AIはMicrosoftやAlphabet/Googleなどのソフトウェア大手、さらにはIBMによって推進されています。調査会社IDCによると、IBMは280億ドルのAI市場で、2018年の売上高26億ドルで第1位のシェアを獲得しています。中国では、AIは、政府だけでなく、Tencent、Baidu、Alibabaなどの技術大手からも大きな支援を受けています。IDCによると、Inspurは最大のシェアを持つ中国企業で、9億ドル、年間成長率は110%です。AIに最も関心を持っている日本企業は、AIに最も注目している-これは大まかに言って、AIの特許申請や投資/買収活動(ソフトバンクの場合のように)と関連しているかもしれません。トヨタのような日本企業は、2020年の東京オリンピックで自分たちの進歩を強調し、認識を変えることを目標としています。これについては既にこちらの記事で書いています。


これらの企業が失うものは何か?

AI特許出願トップ30のリストにある日本の巨大グローバル企業にとって、日本国外の5億ドルの収益が危機に晒される可能性があります。下記チャートに示すJMNCソリューションズによるD&Bデータの分析では、製造業と卸売業がグローバルビジネスの半分以上を占めています。

NTTを除くと、製造業と卸売業がトヨタ、ソニー、日立、パナソニック、三菱電機、キヤノンにとって最大のリスク領域となっています。このチャートはAIがこれらの企業にとって重要であるという前提の下で、多くのAI特許を申請した日本企業にとってのリスクだけを表しているという事を頭に置いてください。しかし、日本には日産、ホンダ、ブリヂストン、コマツなど、海外で収益を上げている巨大製造企業が数多くあります。AIのようなデジタルトレンドに追いついていない企業にとって、グローバル市場で差別化を維持することはどれだけ難しいことでしょうか。自社の代わりにこれらのテクノロジーを購入するのか、それともパートナーからライセンス供与するのか。また、新しいテクノロジーを活用した競争力のある製品を提供するだけでなく、競争の激しい環境でグローバルな速度でビジネスを行うという課題もあります。


日本の多国籍企業の長期的な展望は?

日本の多国籍企業の多くは、武田薬品によるバイオ医薬品のShire買収や、日立によるABB電力網事業の提案など、買収によって日本国外での事業拡大を目指すだろう。Refinitiv (かつてのトンプソン・ロイター)によれば、日本のM&A活動は2018年に過去最高を記録したが、日本政府のSociety 5.0イニシアチブは、まったく異なる戦場において、いかにして、そしてなぜ日本社会が新しい技術をより早く取り入れるべきかの方向性を定めるのに役立つだろう。日本にとってこれがうまく組み合わさる可能性のある分野の1つがロボット工学だ。日本の企業は、人口が減少する中、国内でロボット工学の解決策を繰り返していくだろう。AIを活用したロボット工学の革新は、世界的に非常に競争力のあるものになる可能性がある。私自身の経験に基づき、この分野で成功するためには、他の分野と同様に、グローバルな子会社で現地の有能なリーダーシップと深く関わり、「日本経済の奇跡」の期間中よりも迅速に動く世界のための最善のハイブリッド経営アプローチを共同で開発することにかかっていると思います。

ほとんどの日本の多国籍企業は、医薬品業界の武田薬品によるShireの買収や、日立のABB電力網事業への提案に見られるように、日本国外へその足を伸ばそうとしています。Refinitiv (前身Thompson Reuters)によると、日本のM&A活動は2018年に過去最高を記録しました。その一方で、また日本政府のSociety 5.0イニシアチブは、全く異なる違う分野において、日本社会がいかにして、そしてなぜ日本社会が新しい技術をより早く取り入れるべきかの方向性を定めるのに役立つでしょう。。これがうまく機能する分野の一つがロボット工学です。日本企業は人口が減るにつれ、国内でロボットを使った解決策に何度も取り組んできたと思います。AIを活用したロボティクスのイノベーションは世界的に非常に競争力の高いものになるでしょう。私自身の経験から、この分野でも他の分野のように、『高度経済成長期』よりももっと早く動く世界に対する、最善のハイブリッド経営アプローチを共同で開発することにかかっていると思います。