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  • Writer's pictureChet Chetwynd

世界最速のスパコンを作るため違う道を歩んだ日本

カスタムARMベースプロセッサー、GPU無し、高い電力変換効率

日本のスーパーコンピューター『富岳』が世界のスーパーコンピュータートップ500で1位を獲得しました。その製作者たちは、日本の国益に織り込まれた長期的な思考を反映したユニークなアプローチをしていたのです。富岳は、地球上で最も早いベンチマークシステムトップ500中、ARMプロセッサーアーキテクチャをベースとしたわずか4つのシステムの内の一つとなります。ARMベースアーキテクチャは、携帯電話向け低消費ユースケースから高級化してきており、既存のプロセッサーメーカーのIntelやAMDを脅かしています。また、富岳はNvidia製といったようなコプロセッサ(GPU)を使わない事でも十分にユニークです。富岳の開発プロジェクトは国立研究機関である理研と富士通のコラボレーションによって実現しました。日本が前回スーパーコンピューターで1位となったたのは2011年で、理研/富士通による富岳の前身である「京」です。2015年後半に、次世代機となる「ポスト京」のマシンがARMベースのアーキテクチャになるという噂が広がり始めました。2016年、ソフトバンクがイギリスをベースとするARM社を320憶ドルで買収するという契約で世界を驚かせることとなり、富岳はスーパーコンピューターへ適用されたときに、ARMベースのプロセッサがどれだけうまく機能するかを示す強力なデモンストレーションなのです。


富岳はどれほど早くて効率的なのか?

富岳は、前回1位だったアメリカのIBMによるオークリッジ国立研究所のSummit(サミット)に比べ驚きの2.8倍の早さです。2020年のリストに #富岳 が加わったことにより、トータルパフォーマンスにおいて日本がトップ500に占める割合は7%から24%に飛躍しました。


パフォーマンスが良いものの、電力消費が大きいというシステムがいくつかあります。富岳のシステムはパフォーマンスにおいて1位でありながら、電力効率においても9位にランキングしており、素晴らしい結果となっています。どこの国よりも日本が重要性を置いている電力消費に関して、手頃な運用コストを維持しながら、このようなシステムの拡張が可能であると物語っています。富士通と日本政府は、明らかにARMアーキテクチャで「オールイン」しています。


なぜスーパーコンピューターは重要なのか?

スーパーコンピューター自体について掘り下げてみましょう。スーパーコンピューターは革新的な研究、商業活動、また、国家安全保障のために利用されています。典型的な応用には、気候モデリング、物理シミュレーション、人工知能、機械学習、創薬などがあり。最近では世界のスーパーコンピューターは新型コロナウイルス(COVID-19)に対するワクチンを見つけるレースに参加しています。21世紀に入る前まで、 #スーパーコンピューター はControl Data Corporation(コントロール・データ・コーポレーション)(現在は存在しない)の派生であったCray(クレイ)により支配されており、その次に日本企業の富士通、NEC、日立が続いていました。今日に向けて早送りしてみると、#スーパーコンピューター の #トップ500 リストは中国が占めていますが、中国のベンダーは2015年から2018年の間に、TOP500のシステムをベンチマークするため、大規模で協調的な後押しがあったことを覚えておいてください。中国の数字はトップ500システム中44%と、2018年中ごろと同じ数値で横ばい状態となっています。日本は国際金融危機後の2008年~2010年に起きた落ち込みにより、15年間6%という数値で安定していました。



現在日本にある29のスーパーコンピューターの内、約3分の2の開発は国内ベンダー主導のシステムです。日本に導入されている外資系ベンダーのシステムはHPE(ヒューレット・パッカード エンタープライズ)とCrayが主流です。HPEはCrayを2019年に買収しており、理研/富士通のスーパーコンピューターとライバルになるAMDプロセッサーベースのシステムを提供するため、アメリカのオークリッジ国立研究所と協力しています。


富士通の世界的なチャンスは?

富士通は、富岳向けに構築されたArmベースのプロセッサをA64FXとしてブランド化しました。これは、より広範囲なサーバー市場のサブセットであるハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)市場向けに微調整されています。この新しいプロセッサは、富士通の従来のサーバービジネスをグローバルで復活させることができるでしょうか?ターゲットとするサーバーセグメントには関係なく、テクノロジーだけでは十分とは言えません。富士通やその他の日系サーバーベンダーは、システム全体のコストの高さ、ソフトウェアのグローバル化の遅れ、営業とマーケティングの弱さ、グローバル市場よりも日本市場の方がうまく機能するハイタッチサポートモデルと言ったことから、すでにサーバー市場のメインストリームから追い出されています。 TOP500のデータに基づくと、日本企業は過去数年間に日本国外でベンチマークされた471台のスーパーコンピューターのうち5台しかなく、ドイツ(NEC)に3台、台湾(富士通)に1台、オーストラリア(富士通)に1台となっています。さらに国際的なHPCの機会に対処するために、富士通の新しいパートナーであるHPE/Crayは、少なくともテクノロジーサプライヤとして、CS500サーバーでのA64FXプロセッサを提供し、それをHPE/Crayの販売、ソフトウェア、サポートのエコシステムを含めてCrayを通して世界で使えるよう合意しました。富士通は、今後も日本市場でスーパーコンピューターの販売とサービスを行っていきます。義務と呼びましょう。いずれにしても、ARM社への投資を通じて富岳周辺の宣伝から最も経済的に利益を得るのは、富士通ではなくソフトバンクかもしれません。


しかし1位になるのは良いことです

世界最速のベンチマークを叩き出すスーパーコンピューターを持つことは、日本にとって良いことではあります。技術的な創意工夫は日本が東京オリンピック周辺で描きたいイメージであるため、高効率のスーパーコンピューティングアーキテクチャで称賛を勝ち取るには絶好のタイミングです。さらに重要なことに、自動運転の自動車、ロボット、また、あらゆる種類の「エッジ」デバイスは低電力コンピューティングの恩恵を受けており、ARMの単純な命令セットは、Intelの複雑な命令セットがスケールダウンするよりもスケールアップしやすいようです。富岳は、GPUを使用せず低消費電力で驚異的なパフォーマンスを

発揮する方法を表現するものです。日本政府が資金提供する理研/富士通プロジェクトの結果として、何千人ものスキルを向上させたソフトウェアエンジニア、ハードウェアエンジニア、科学者が日本に存在することとなり、日本の労働力の流動性が高まるにつれて、そのようなスキルが商業プロジェクトの道を開くかもしれません。しかしながら、これらの商業プロジェクトが世界的な牽引力を発揮するためには、急速に進化するセクターにいる日本企業は、グローバルビジネスを管理する、サービスを行う市場時近い高度な技術を持つ、業界知識があるリーダーに力を与える、と言ったもっとハイブリッドなアプローチを採用する必要があります。最高のテクノロジーや製品を持っていても、競争の激しいグローバル市場での成功を保証することはできないというのは変わらぬ事実なのです。


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